2014年9月2日火曜日

山崎ナオコーラ『指先からソーダ』


山崎ナオコーラの本を読むと、子供を思い出す。精一杯自分の頭「だけ」で考えている、自分勝手で、いくぶん向こう見ずな子供のことだ。

この間知り合いの子がこんなことを言っていた。

知っとった? これは秘密なんやけどな、栄養のあるものを食べたら太るんやって。だから私、よくポテトチップス食べるねん。だってポテトチップス、栄養ないもん。

魅力的な説だと思う。
山崎ナオコーラの小説の主人公は、いつもこういう「魅力的な説」を思い出させる。それは勢い狭量ですらあり得るし、まぁ単に間違っている(誤解含みである)こともある。

自分の文章に対する自負を隠さないところも、少し子供っぽい。
でも多分、山崎ナオコーラは私たちが無意識にそうしているところのものを、「隠さない」だけなのだろう。
山崎ナオコーラは書くことにためらいがないし、書いたものに対して恥じるところがない。ただちに、良くも悪くも、と付け加えるべきかもしれないが。


山崎ナオコーラはちょっとひどい文章も書くが(『論理と感性は相反しない』は苛立つほどの低クオリティだった)、個人的には『長い終わりが始まる』くらいから文章が目に見えて変わってきたように思う。
いや、それほどでもないのかもしれないけど。(ちなみに、『長い終わりが始まる』の解説は宇野常寛だ)


詰めの甘い発想をさらしながら人をあげつらうような文章を書く一方で、自分の考えを訂正することに迷いがない。不思議な人だと思う。
もし、彼女の子供っぽさに心を乱される、ムキになることがあるとしたら、自分のなかの子供がうずきだすからなのかもしれない。
『指先からソーダ』、正直彼女の本で一番好きです。石川直樹の解説もいい。


……と、今回のブログは彼女のエッセイ的なとりとめのなさを意識してみました。いや、いつも通りか。

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