2013年1月18日金曜日

伊藤邦武『経済学の哲学』―エコロジーとエコノミー/裏地と織物


例えば、戸田山和久の『知識の哲学』が、懐疑論を裏地として織られた、知識論の伝統と現代の知識論に関する素描だとすれば、その形式に似ている。

実際のところ、1限ということもあってかなりサボっていたのだけれど、伊藤先生のこの内容に触れる授業は取っているから、かなりわかり易かった。
この新書は、通常の経済学史の裏地ですらないもの――例えば、根井雅弘の『異端の経済学』で語られるような、"異端"にすら分類されないもの――エコロジーの経済思想を扱うものだ。

エコロジーとエコノミーの相克、緊張、共犯関係、沈黙、共闘……この弁証法的な関係を、エコロジーに軸足を置きつつ、エコノミーという裏地にもかなり目配せをしながら描かれた経済学の哲学史だ。
ラスキンという思想家を中心に語られることになる。実際、「19世紀の経済思想とラスキン」という副題すら与えられているのだから。
(例えば、『暇と退屈の倫理学』でもかなり重要な役割を果たしていたウィリアム・モリスや、ご存知のガンディー、あのプルーストもこの思想家の影響下にある)
面白いことに、彼の思想は見捨てられることなく、まわりまわって、そのかなりの部分が、近代経済学の体系の中に回収されて行っている。これが面白い。

伊藤先生自身が、「あとがき」で自身の『ケインズの哲学』とかなりリンクするとの旨を書いていることですし、同じ京大の経済社会思想の佐伯先生の、上下組の新書『アダム・スミスの誤算』、『ケインズの予言』を併せて読むと美味しいかもしれません。

 

ロハスとか、エコとは違う、エコロジーの一面。
忘れられた思想家、ジョン・ラスキン
かなり、面白かったです。
ラスキンの『近代絵画論』に関しては、松岡正剛の千夜千冊にありました。参考までに。

伊藤先生が挙げていた、エコロジー思想の参考文献の中から、ほんの一部だけ紹介。
リュック・フェリ『エコロジーの新秩序――樹木、動物、人間』
レビュアーが叫んでますが、実際そこまで読みにくくはありませんでした。彼ないし彼女が、個人的にアレなだけでしょう、多分。
アンナ・ブラムウェル『エコロジー――その起源と展開』
ジョージ・マイアソン『エコロジーとポストモダンの終焉』
レイチェル・カーソン『沈黙の春』
これもやっぱり入ってるんだなぁと。

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